第百二十二章

春は彼女の顔色の変化に気づき、少し緊張した面持ちで歩み寄った。

「葵、どうしたの。どこか具合でも悪いの」

葵は答えない。手元のスマホを素早くタップし、先ほどのログインIPの追跡を試みた。

だが、その基層アルゴリズムは一瞬だけ瞬き、すぐさまネットワークの深淵へと完全に姿を消した。あまりにも鮮やかで、現実世界に繋がる痕跡は一切残されていない。

葵はスマホをしまい、ストレッチャーの上で白布を被せられた和也へ冷ややかな視線を落とす。

「春、戻って明日の葬儀の準備を。藤原家の連中が、そろそろ動き出す頃よ」

きびすを返した瞬間、胃の腑を細かく締め付けるような痛みが走った。それでも、彼女は眉一...

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